河野邦広法律事務所

相続対策に必要な預金額とは?-金融リテラシー編-

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相続対策に必要な預金額とは?-金融リテラシー編-

相続対策に必要な預金額とは?-金融リテラシー編-

2023/11/22

 相続対策とは、亡くなった後に残された財産を相続人等にスムーズに引き継ぐために行う計画です。その中でも重要なポイントの一つが、相続税を払うために必要な預金額の確保です。今回は、金融リテラシーの観点から、相続対策に必要な預金額について解説します。

目次

    相続で起こる問題?

     遺産の配分を遺言で定めたとしても、その配分が相続人等にとって公平であるとは限りません。相続人同士で争いが起こることもあり、その解決には時間・お金・労力がかかることがあります。また、遺言書が存在しない場合、遺産の配分や処分方法が明確にならないことも相続問題の原因となります。相続手続きは複雑であり、協議がまとまらない場合は裁判所を介して行われることもあります。よって、相続に関しては、事前に専門家に相談することが望ましいといえます。適切な対処方法が採られれば、遺産の引き継ぎがスムーズに進み、相続人間のトラブルを防止することができることもあります。

    このような遺産の配分の問題をクリアすることも当然重要ですが、遺産の額が大きい場合、同じくらいやっかいな問題が発生してしまうのです。それが相続税の問題です。相続税の納付は原則として現金一括納付とされていることから、相続した額は大きくても相続税が払えないという事案が頻発しています。

    相続税の支払いに預金を充てる?

     相続といえば、家や土地などの財産が思い浮かびますが、預金もまた相続財産の一つです。預金は、相続手続きが進む上で非常に重要な役割を果たします。例えば預金は死亡時に金額がほぼ定まっているため分割時の価値の変動がなく、相続人は安心して取得することができます。また1円単位で分割することができるため、取得額の調整に利用することができます。

     預金には普通預金、定期預金の他、様々な種類があり、引き落としに利用する口座や、不動産収入がある場合には賃料の振込口座として使用されている場合もあるでしょう。銀行に預金者死亡の事実を伝えると引き出しや振り込みができなくなってしまいますので、預金口座の管理はしっかりと行われなければなりません。そのためには相続人同士で情報を共有し、しっかり話し合って、協力して手続きを進めることが必要です。

     相続税の申告期限までは10か月しかありませんので、それまでに遺産分割協議が成立しないようであれば、相続人間で協力して預金を引き出す手続をした上で、相続税の支払いに充てることが現実的です。

    相続税の仕組みとは?

     相続税とは、遺産にかかる税金であり、相続人等が支払う税金のことです。相続税は、相続財産の評価額に応じて課税されます。課税対象となる相続財産は、不動産、有価証券、現預金、自動車など、様々な種類があります。相続する人には、法定相続人という区分があり、配偶者、子、親、兄弟姉妹が該当します。法定相続人以外の方が遺産を取得した場合には、相続税が高く課税されることがあります。 相続税の評価額は、原則として相続財産が不動産の場合は路線価等を利用して算出された金額、株式等の場合には死亡時の時価額が基準となります。「3000万円+600万円×相続人の数」の範囲では相続財産が課されませんが、相続財産が課される場合、税率は高く、相続財産が多ければ多いほど税率も高くなりますので、相続財産が多い場合には深刻な負担となる可能性があります。相続税の金額を減らすためには配偶者に相続させるなど、基本的な方法もありますが、その他の制度については別の記事で触れておりますので、ご参照ください。

    相続の際に注意すべきこととは?

     はじめに、相続人が相続税を支払うにあたって被相続人の預金を利用する場合について考えてみましょう。被相続人の死亡が銀行に明らかになると銀行は預金を引き出したり、振り込みができないようにします。預金を解約する場合には相続人全員の署名・実印による押印・印鑑証明の添付が必要になります。このような煩雑な手続を回避するためには、生前に計画的に相続人に対して金銭を贈与しておくことが考えられます。生前における一定金額以上の贈与には贈与税がかかりますので、金額を調整する必要がありそうですが、相続時精算という方法を採ることである程度大きな金額を贈与しておくことも可能です。

     次に賃料収入がある場合ですが、銀行は被相続人が死亡したことが明らかになると賃料の振り込みもできないようにしてしまうので、相続税の支払いのための預金口座と賃料の振込口座を分けておくことも検討しましょう。

     最近ではいわゆる仮想通貨が相続の対象となりはじめています。仮想通貨については相続税の問題もありますが、売却によっても税金がかかりますので、多額の仮想通貨をお持ちの方は、生前にその処理について税理士等に相談しておくことをお勧めします。

    自分や家族の将来のために金融リテラシーを身につけよう

     相続という分野では、大きな財産が絡み合う場面が多々あります。そのため、金融リテラシーを身につけていないと、自分や家族の将来に関わる重要な判断を誤ることにもなりかねません。 金融リテラシーとは、お金や投資に関する知識やスキルのことです。ただ単にお金の使い方や節約方法を知っているだけではなく、将来のための資産形成や相続対策についても考える必要があります。 例えば、相続税の申告については、財産評価の方法や相続税の計算方法など、専門知識を持った人でなければ難しいものです。また専門家に相談したとしても回答内容を判断することも難しいでしょう。しかし、金融リテラシーを身につけていれば、専門家に相談し、回答内容を自分自身で判断し、適切な対応をすることができます。 また、電子マネーや仮想通貨、証券化など、金融にまつわる環境は以前では考えられないようなスピードでめまぐるしく変化しています。それらを正確に理解して相続のトラブルを回避するためには金融リテラシーが必要不可欠です。 自分自身が相続に直面する可能性はもちろんですが、家族の相続にも関与することもあるかもしれません。そのため、金融リテラシーを身につけることは、自分や家族の将来を安心させる大切な投資となるでしょう。

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